コーチングの哲学:トニー・ロリンスキーによるノートルダム・バスケットボールのトレーニング方法
トニー・ロリンスキー氏は、ノートルダム大学の男子バスケットボールとホッケーチームのストレングス&コンディショニングのヘッドコーチを務めています。21年間の経験を有するロリンスキー氏は、2014年にCollegiate Strength and Conditioning Coaches Associationからマスター・ストレングス&コンディショニングコーチ(Master Strength and Conditioning Coach)に任命され、全米ストレングス&コンディショニング協会による資格も取得しています。
ロリンスキー氏に、その指導方針やストレングス&コンディショニングコーチという職業がもたらすやりがいについて質問してみました。
ロリンスキーさんのストレングストレーニングの哲学は何ですか?
私のストレングストレーニング哲学は、多関節の動きと、ヒンジング、スクワット、プル、プッシュ、ジャンプ(着地メカニクス)、方向転換(スプリント)といった分野での漸増的過負荷を用いた年間プランに基づいていくというものです。このプロトコルに従うことで、個々のバスケットボール選手がそれぞれの潜在能力を最大限に発揮できるようになります。私はこの哲学をシンプルに保ち、ハードに指導しています。レオナルド・ダ・ヴィンチは「シンプルさは究極の洗練である」という名言がありますが、私もそれに賛成です。
プレシーズンとインシーズンで具体的なトレーニングはどのように違うのでしょうか?
私たちの目標は、パワー(P=力 × 速度)を高めることです。そのため、常にできるだけ大きな力を地面に加えるように努めます。シーズン中も、同じ動きを使ってウエイトルームでトレーニングを続けますが、レギュラーシーズンに入るとそのボリュームを減らします。
オフシーズンとプレシーズンでは、筋力アップと力の発揮を目指すプログラムを作ります。インシーズンになると、速度にフォーカスしたプログラムを採用します。インシーズンの各トレーニングセッションでは、強度を高く保ちながら、ケガの予防とパフォーマンスの向上のためのものにも取り組みます。
選手たちは1年のうちほとんどの期間、ウェイトルームにいるのですか?各シーズンのストレングストレーニングはいつから始めるのですか?
選手たちは1年中ほとんどの時間をここで過ごしています。チームは6ヶ月の長いシーズンを終えて、精神的にも肉体的にも充電するために2週間の休憩を取ります。その後、筋肉組織の質を向上させ、いくつかの動きの欠点を正常に戻すように、簡単なストレッチからトレーニングを再開するのです。これは、彼らが6〜8週間のサマーセッションに参加している間に、オフシーズンの準備をするのに役立ちます。
ポジションや選手によってトレーニングは違うのですか?
私は、個々のアスリートに対して、上記の6つの分野においてトレーニングプランを作成していますが、できるだけ強く、弾力性のあるものにします。荷重と減速の能力を開発し、スティフネス(ブレース)とコンプライアンス(回転力)を作り、加速して力強くなる能力を持つ必要があります。アスリートの現在の身体的発達によって、エクササイズの内容は変わるかもしれませんが、目標は同じです。各アスリートの遺伝的潜在能力を最大限に引き出すために手助けをすることです。
バスケットボール選手のトレーニングで最も困難なことは何ですか?
ストレングストレーニングが競技の向上と将来の投資(身体)を守るためにいかに役立つかを選手たちに理解してもらうことです。多くの大学のバスケットボール選手は、身体能力開発プログラムに参加したことがないため、競技相手との差をつけるためにストレングストレーニングがどのように役立つかを事前に教えることが非常に重要です。そうすることで、信頼関係が生まれ、ハードワークが可能になり、プログラムへの「賛同」が得られるのです。
コーチとして最大のやりがいは何ですか?
私にとっての最大のやりがいは、素晴らしい若者たちと信頼関係を築くことができることです。
私はまだコーチとしての経験が浅かった頃、子どもたちに「厳しく」指導して良いかどうか、自分でもよく分からなかったのです。ある教え子がNBAのドラフトで指名された後、彼は私のオフィスを訪れました。彼は、私が彼にやりたいことだけをさせなかったことに感謝していました。自分自身とチームメイトに責任を持たせ、最高の基準を課すことで自己成長を促し、規律を学び、逆境に負けないよう教わった事にも感謝していました。その瞬間、私は自分のコーチング哲学に気づきました。そしてこの20年間、この哲学をアスリートに教え続けています。毅然とした態度で、公平に、威厳と思いやりをもって若者を指導することで、一生大切にできる人間関係を築くことができます。その人たちがプロのバスケットボール選手になろうと、ビジネスで成功しようと、素晴らしい父や母になろうと。それが私にとっての最大のやりがいなのです。